東京:両国「下総屋食堂」


江戸東京博物館の企画展「美しき日本 大正昭和の旅展」に行ってきました。
「Beautiful Japan」昭和5年(1930)が使用されたポスターを見たときに
これは行かねば!と思わずには居られませんでした。
また、川瀬巴水の版画が多数見られるということで
4年前にニューオータニ美術館のイベントで林望先生が講演した内容を
おぼろげに思い出しながら楽しみにしていきました。

大正昭和のつかの間の平和な時期に観光が普及、
そのパンフレットやポスターなどの展示がまず多数あり。
ピクニックセットなぞ大変今でも欲しい代物でした。
ホーローのカップ&ソーサーのセットとバスケットですよ。

川瀬巴水の作品群は素晴らしいものでした。
リンボウ先生は川瀬巴水の価値を「懐かしさ」と定めていましたが
確かに日本人の心に組み込まれた何かを刺激するものがありました。

それから雪の画家と云われたという作品は、雪のみならず
雨の表情も素晴らしい。
また、雪や雨の風景の中にも静寂の水面に映る向こう岸の灯かりや
月明かりが映りこむ様子が描かれた作品にも心にぐっときます。

お昼ごはんはいったん外に出て、
これまた正しい伝統的な大衆食堂のこちらへ。
「レトロ風」なつくりの飲食店が出没する昨今、
レトロ風ではなく、これは本当のメシ屋です。
入り口が開けっ放しの暖簾をくぐると、
ご主人がすぐに近寄ってきて「うちはおかずをあっちで選ぶの。
あとはごはんとお味噌汁」と、すぐにシステムをご案内。

まずは、でーんとショーケースに鎮座する
卵がみっちりとつまったカレイの煮付けを選び、
あとは、豆と野菜とこんにゃくの煮物、
茄子炒めの味噌和え、そしてどんぶりごはんと豚汁。
ほっとするメニューで、
昭和へのノスタルジィを頂き、満腹でお店を出ました。

午後は、常設展へ。
10月1日は都民の日だとかで、入場料が無料になっていました。
両国橋を渡って江戸の町へいざなわれ、
纏や千両箱を持ち上げるなどの体験できるもの、
ジオラマで街を再現したものを、オペラグラスで覗くと
不思議に臨場感ある様子を楽しめたり
歌舞伎の舞台:助六の一こまが豪華絢爛な衣装とともに繰り広げられていたり。

東京の時代が、江戸から明治に自然と遡っていくのが判りやすく展示されています。
ちょうど、中村座前では江戸博寄席の、
春風亭美由紀さんの俗曲が始まる処。
最近仕事で徹夜続きでしんどそうな夫をベンチで休ませ、
すっ飛んでいきました。
三味線が館内に響き渡るとなにやらじっとしてられないような
華やかな賑やかさが出てきます。
吉原のこと、四谷というジャンルなど、短い間でしたが
俗曲プチ講座的にも楽しむことが出来ました。
最後は軽快な踊りを踊って締めとなりました。

その後は明治から関東大震災、第二次世界大戦と時代が下り
現在に戻ってきました。
展示のボリュームにやや疲れ気味で、3Fの休憩スペースで
私もしばし眠ってしまいました。
実に見ごたえのある展示、しかもただなんてラッキー!

帰りは秋葉のヨドバシの大混雑に目を丸くしつつ帰宅。
夜、たまたま見たテレビ東京の「美の巨人たち」で映った一枚の写真。
戦後の母と子の写真は、本日江戸博の常設展で見たものでした。
なんと云うことの無い写真なのに心に残っていたのは、
そこには確実なドラマがあるからに違いありません。

充実の土曜日でした。